コンプライアンスの順守を徹底する中で、部下への声かけに、意識して柔らかい表現を使おうと心がけているマネジメント層が増えてきました。
しかし、良かれと思って使った表現が、実は部下のヤル気を削いでしまうことも珍しくありません。
そこで今回は、部下のヤル気を削がない、効果的なコミュニケーション法をご紹介します。
柔らかい表現に注意
仕事を頼む際、「君でも無理なくできる仕事だから」とか、「難しい仕事ではないから」という表現を使用したことはありませんか。
これらの言葉は、「部下に無理な仕事を押し付けているわけではない」という、ハラスメント回避を重視した柔らかい表現といえます。
しかし、これらの言葉は、「自分は期待されていない」とか、「仕事ができないと思われている」といった誤解を受けてしまうケースがあります。
柔らかい表現に気を取られるあまり、部下のヤル気を削いでしまうのは、本意ではないですよね。
適切な言葉をセレクトすることで、部下のヤル気やモチベーションを高めることができます。
そこで知っておきたいのが、「部下のヤル気を引き出すコミュニケーション法」です。
知っておきたい「ピグマリオン効果」と「ゴーレム効果」
部下のヤル気を引き出すために知っておきたいのが、「ピグマリオン効果」と「ゴーレム効果」です。
ピグマリオン効果とは
ピグマリオン効果は、「人間は期待された通りの成果を出す傾向がある」という事象のことです。
アメリカの心理学者である、ローゼンタールが行った実験で実証されました。
別名、「教師期待効果」や「ローゼンタール効果」とも呼ばれています。
つまり、マネジメントを行う上司が、部下に対して期待していると、その期待を受けて部下の成績が伸びる可能性があるのです。
また、上司から期待されていると感じた部下は、期待に応えるために努力をします。
そのため、結果が出やすいという面もあります。
・ピグマリオンとは?
ピグマリオン効果は、ギリシア神話に登場する、ピグマリオン王から名付けられました。
彫刻の名手でもあったピグマリオンはある時、理想の女性像を彫りあげます。
その像に恋をしたピグマリオンは、女神アフロディテに祈り、像に命を与えてもらい、娘パフォスを授かりました。
このことから、人が心から願うことや期待することが、良い結果を産むとして、「ピグマリオン効果」と名付けられました。
ゴーレム効果とは
ピグマリオン効果の対照的なものとして、心理学で知られているのが「ゴーレム効果」です。
こちらも、ピグマリオン効果同様アメリカの心理学者ローゼンタールによって提唱されました。
「周囲の期待が低い場合には、その通りにパフォーマンスが低下してしまう」という効果のことです。
つまり、マネジメントを行う上司や周囲の仲間が、部下に対して期待をせず低い評価を下していると、それを受けて部下の成績も低下してしまう可能性があるのです。
例え口に出していなかったとしても、部下に対して期待が持てなかったり評価が低かったりすると、態度に出てしまうこともありますよね。
ポテンシャルを最大限に発揮できるように環境を整備するのも、上司の大切な仕事のひとつです。
部下を信じ期待して仕事を任せるとともに、それを言葉や態度であらわすことが大切なのです。
注意したいのが、「期待しているからこそ、厳しい言葉を投げかけてしまうケース」です。
期待しているということが部下に正しく伝わっていない場合、ゴーレム効果が生じてしまう可能性があります。
一人ひとりの資質や性格に合った働きかけができるよう心がけましょう。
・もし部下が失敗してしまったら
失敗をしてしまった部下に対して、チャンスを与えるのを躊躇してしまうケースは珍しくありません。
しかし、失敗を挽回するチャンスがないと、部下の評価は悪いままになってしまいます。
評価が低下してしまった時には、ハードルを低くして評価を挽回するチャンスを与えましょう。
低いハードルをクリアすることで、自信を取り戻すだけではなく、モチベーションを高める効果も期待できます。
また、上司であるあなたの中でも、部下は「失敗をした人」から、「失敗を糧に成長した人」という評価を得ることができます。
頭では理解していても、目の前で何度もミスを重ねられると、正常な判断をくだせなくなってしまうケースは多々あります。
自分の中でレッテルを貼ってしまわないためにも。
部下が失敗をしたらフォローするだけではなく、成功体験を得られる課題を与えてあげましょう。
・ゴーレム効果の由来
ゴーレムは、泥人形のことです。
造った人の命令で動く泥人形は、力は強いですが命令する人の言いなりです。
このことから、教師に見放されて成績が低下する様子が「ゴーレム効果」と名付けられました。
マネジメントにピグマリオン効果を活用する
「上司に期待されて、その期待に応えようと必死になった」経験をお持ちの方も多いと思います。
まずは部下を信頼して仕事を任せ、部下が必死に頑張ることができる体制を構築しましょう。
期待をすることで、無意識のうちに部下の態度や言葉に注意を払い、結果としてよく面倒を見るようになるケースは多くあります。
また、態度だけではなく言葉で、「期待している」ことを伝えるのも大切なポイントです。
そして、フィードバックをこまめにすることで、モチベーションをあげる効果が期待できます。
「今日のここのやり取りが良かった」とか、「この提案はここが素晴らしい」ポジティブな評価をしっかりと伝えましょう。
重要なのは信頼関係の構築と部下を受け入れること
信頼関係がなければ、言葉や態度を正確に相手に伝えることができません。
信頼関係を構築できるように、日頃から部下とのコミュニケーションを取りましょう。
また、好意的な態度や受容的な態度を示すことも重要なポイントです。
信頼関係があるからといって、些細なミスで叱り飛ばしたり、成長の糧にするためにバックアップなしで無謀な挑戦をさせたり…。
こうした態度は、ごく一部の部下には効果的なケースがあったかもしれませんが、大多数の部下の成長には繋がりません。
心を開いて部下を受け入れるとともに、部下の成長に心から期待しましょう。
プレッシャーを与えすぎないように注意
注意したいのが、ピグマリオン効果を期待するあまり、過度の期待を寄せてしまうとプレッシャーで逆効果になってしまうケースがある点です。
性格やタイプによっては、伝え方を工夫する必要があります。
言葉選びや声をかけるタイミングに気を付けましょう。
更に、大きすぎる目標はプレッシャーを与えすぎてしまいます。
大きな目標を掲げた時には、ミニマムなステップを設けて、着実に目標に向かって進んでいけるように配慮しましょう。
その際には、部下一人ひとりの資質やスキルを考慮することも大切です。
おわりに
自分の培ってきた経験を活かして、部下にアドバイスをしている方も多いと思います。
しかし、部下一人ひとりにあわせてコミュニケーションを工夫しないと、折角のアドバイスが成長に繋がりません。
部下のヤル気とモチベーションを引き出し、最大限のポテンシャルを発揮できる環境を作るためにも。
まずは上司であるあなたが、正しいアプローチ法を身につけましょう。
コミュニケーションがより円滑になることで、業務効率があがるだけではなく、生産性をあげる効果も期待できます。
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