介護業界のIT化はなぜ進まない?必要性・課題やメリットなどを解説

さまざまな業界でIT化が進む昨今において、介護業界のIT化はなかなか進んでいないのが現状です。

IT化が進めば業務効率化が実現し、スムーズに仕事ができると考える人も多いでしょう。とはいえ、現状において「介護業界でIT化が進まない理由」は何なのでしょうか?

そこで当記事では、介護業界のIT化が遅れている原因や課題・IT化の必要性・メリットなどを解説します。

介護業界のIT化が進まない理由

ほかの業界でIT化が進むなか、介護業界でIT化が進まない理由は以下の通りです。

資金不足・コスト面の課題

多くの介護施設や機関は、予算が限られており、ITシステムやソフトウェアの導入にかかる費用をまかなうのが難しい状況にあります。導入後の維持費用やアップデートにも資金が必要であり、これらのコストを捻出することは容易ではありません。そのため、IT化を進めたいにもかかわらず、資金面で二の足を踏む施設や機関は多いでしょう。

インフラストラクチャーの不足

IT化を進めるためには、「適切なインターネット環境」や「パソコンやタブレットなどのデバイス」といった十分なインフラストラクチャーが必要です。しかし介護業界においては、インストラクチャーが不足する傾向にあります。高速かつ安定したインターネット接続やデータセキュリティを確保するための設備が整っていない場合、ITシステムの導入や運用が困難になりがちです。

介護職員のITスキル不足

介護職員の中には、ITに関するスキルや知識が不足するケースが多く、新しいテクノロジーを適切に活用することが難しいケースも見受けられます。ITスキルの向上には時間とトレーニングが必要であり、プログラムの整備も急務です。

法的・規制上の問題

介護業界は厳格な法的規制にしばられており、特に「患者データ」や「プライバシーとセキュリティに関するルール」が厳しいといえます。ITシステムの導入に際しては、法的要求を遵守しなければならず、要件を満たす対策を講じることが必要です。規制上の問題は、IT導入を難しくし、遅滞を招く原因となります。

介護業界のIT導入によるメリット

介護業界におけるIT導入は、多くのメリットをもたらすと期待されます。IT導入による主なメリットは以下の通りです。

業務効率化の実現

IT導入が進めば、介護業務の効率が大幅に向上します。例えば、デジタル化された医療記録やスケジュール管理システムを使用することで、情報に対する迅速なアクセスが可能になるでしょう。
また1つの場所で情報を管理できるため、同じようなファイルが点在するといった事態も防止できます。業務効率化によって介護職員の作業負荷が軽減されれば、より多くの時間を利用者のケアに費やせるでしょう。

介護品質の向上

IT導入は介護サービスの品質向上にも貢献します。デジタル記録により、患者の健康情報が正確に記録され、それに基づいた適切なケアが提供されます。
また、予防医療や予防措置に関するデータ分析が容易に行えるため、利用者の健康状態を早期に把握し、適切な対応の実施が可能です。

顧客サービスの向上

IT導入により、利用者とその家族に対するサービスも向上します。オンライン予約システムやコミュニケーションツールを活用すると、利用者との連絡がスムーズに行えますし、サービス提供者とのコミュニケーション自体も向上します。
利用者や家族のニーズに迅速かつ適切に対応できるでしょう。

データ管理と分析の利便性

IT化されると大量のデータを「効果的に管理」および「分析」が可能です。データ分析をすることで、介護施設や機関は優れた意思決定を行うための洞察を得られるでしょう。また、リソースの最適化やサービスの改善につながります。
多くの施設・機関でIT化がすすめば、業界全体の「効率性」「品質向上」「個客満足度アップ」といったポジティブな影響をもたらします。

介護業界のIT導入に伴うデメリット

IT導入には多くのメリットがある一方で、デメリットやリスクも考慮する必要があるでしょう。主なデメリットは以下の通りです。

導入コストとリスク

ITシステムやソフトウェアの導入には、初期コストがかかります。

【初期コストの例】

  • 新しいハードウェア・ソフトの購入
  • 操作のトレーニング時間
  • インフラの整備

初期コストによって、介護機関や施設の予算に負担がかかる可能性があるでしょう。また、導入後のトラブルシューティングやシステムのアップデートにもコストとリスクが伴います。

プライバシーとセキュリティの懸念

介護施設や機関でIT化が進めば、利用者の個人情報や医療データがデジタル形式で取り扱われます。
便利になる一方で、不適切な管理やサイバー攻撃などがあれば、データのセキュリティやプライバシーの懸念が高まるでしょう。不正アクセスやデータ漏洩を防ぐには、強固なセキュリティ対策が必要です。

自動化による人間性の欠如

IT化が進むと、一部の業務が機械に置き換えられる可能性があります。データ入力や管理などであれば、効率的になることで、円滑に業務がまわるでしょう。
一方で、利用者との関わりが大切な業務も自動化すると、人間性を欠いた内容になり、利用者にマイナス感情を抱かせる懸念があります。人間的な温かさや感情の提供が必要な介護サービスにおいて、IT化とのバランスを取ることが重要です。

社会的側面と倫理的問題

IT化を促進すると、高齢者や介護を必要とする利用者自身が、テクノロジーにアクセスを要する場面も出てくるでしょう。年代によるデジタル格差によって、「利用者がIT化に対応できるか?」といった、社会的側面に関する問題が浮上します。
また、利用者のデータ利用に関する倫理的な問題も考慮する必要があります。利用者のプライバシーに関するデータの取り扱いには、本人や家族の同意はもちろんのこと、情報の適切な取り扱いに対するガイドラインの確立が必要です。

IT導入に伴うデメリットやリスクは存在するものの、マイナス要素は適切な対策とバランスによって軽減できます。

介護業界のIT化による「成功事例」の紹介

ここでは、IT導入に成功した介護機関や施設の事例を紹介します。事例を参照することで、成功の要因などが見えてくるでしょう。

成功事例1:システムの導入

介護施設Aでは、スタッフの離職率の高さやモチベーションの低さに悩み「評価システム」の導入を決意します。評価システムの導入によって「頑張りが適切に評価」されるようになり、前向きな行動や離職率の改善が見られました。

また評価システムによって、現状の課題も見えるようになり、効率的に問題改善に取り組めるようになりました。

成功事例2:モバイルアプリの導入

介護施設Bでは、利用者と家族向けのモバイルアプリを導入しました。
同アプリは、「施設の情報」「スケジュール」「健康状態」を利用者と家族にリアルタイムで提供し、コミュニケーションを促進するものです。アプリの導入により、利用者と家族の満足度が向上し、スタッフの負担が減少しました。

介護業界のIT化を成功させるコツ

介護業界のIT化を成功させるには、コツを踏まえる必要があります。

主なポイントは以下の通りです。

1、リーダーシップ

IT化を進めにくい介護業界において、IT化を促進すべく「組織内でリーダーシップをとる存在」は不可欠です。導入プロジェクトを主導し、スタッフにサポートとトレーニングを提供するリーダーの配置が必要でしょう。

2、ユーザーに配慮した設計

IT化を進めても、利用者や職員といったユーザーが使いこなせなければ意味がありません。利用者、家族、介護職員のニーズを考慮し、使いやすい製品を選ぶことが大切です。br>ニーズを把握するには、アンケートなどで積極的に情報を収集すると良いでしょう

3、セキュリティとプライバシーへの対策

IT化では、個人情報などを守るべく、セキュリティへの十分な対策が必要です。データ暗号化、アクセス制御、トレーニングなどのセキュリティ対策が実施されてはじめて、患者データの安全性が確保されるでしょう。

4、教育とトレーニング

IT化を実現するには、システムなどの製品の使用が不可欠です。製品を正しく使用することで、業務効率化を最大限に実現できます。そこで、システムの適切な利用方法を学ぶ「教育・トレーニング」は欠かせません。

またIT導入のポテンシャルを最大限に引き出すために、計画的で継続的なアプローチも必要です。

IT導入補助金の紹介

IT化を進めるためには、さまざまなコストがかかります。コスト面が問題でIT化に踏み切れない場合には、IT導入補助金を検討すると良いでしょう。
ここでは、介護業界のIT化に役立つ「IT導入補助金」について紹介します。

IT補助金の種類

IT補助金の内容は、開催年によって変わることがあるものの、一般的には以下のような内容になります。

通常枠ITシステムやソフトウェアの購入費用における一部を補助
セキュリティ対策支援セキュリティ対策に対する費用の一部を補助
デジタル化支援デジタル化を考慮した各種ソフト購入の費用を一部補助

申請時期と基準

IT導入補助金の申請(時期や必要書類)と基準は、年度によって異なります。

【審査基準の例】

  • 介護機関の種類や規模
  • IT化の目的と、目的達成のための計画

申請時期に間に合わせ、要件を満たすことで補助を受けられるため、計画的にスケジュールを組むとよいでしょう。

詳細については、毎年更新される【IT補助金のプログラムガイドライン】をチェックしてください。

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まとめ

介護業界におけるIT化は、業務効率アップや顧客サービスの向上など多くの利点をもたらします。しかし、導入にはコストやリスクが伴い、データセキュリティや倫理的問題も考慮する必要があるでしょう。介護業界におけるIT導入は、慎重な計画とリーダーシップも欠かせません。

株式会社シーグリーンの【評価ポイント】は介護施設でも活躍する評価システムです。
ポイント制の評価システムであるため、一般的な評価システムよりも手軽に導入でき、操作も容易です。

スタッフの適切な評価に役立ち「モチベーションアップ」や「生産性向上」に役立ちます。また利用者のリハビリカリキュラムなどでも活躍しています。
IT補助金の対象製品であるため、補助金を活用すればコスト面の負担も減るでしょう。導入時や導入後のサポートも充実しており、「IT化が不安」や「教育体制で悩む」ような施設様も安心して利用できます。

IT化によって業務効率化を実現したい場合には、評価ポイントをお試しください。

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