人事評価システムを導入することで、業務効率の向上や従業員の満足度向上といった多くのメリットを期待できます。たとえば、評価基準の明確化により、従業員にとって納得感のある評価が実現しやすくなります。ただし、費用や運用面の課題が伴うため、導入にあたっては注意が必要です。この記事では、人事評価システムを導入する際のメリット・デメリットと、導入までの基本的な流れをわかりやすく解説します。導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
人事評価システムとは?
人事評価システムを理解するには、まず人事評価の定義を知ることが重要です。国家公務員法における定義は以下の通りです。
任用、給与、分限その他の人事管理の基礎とするために、職員がその職務を遂行するに当たり発揮した能力及び挙げた業績を把握した上で行われる勤務成績の評価をいう
これは国家公務員向けの定義ですが、民間企業にもほぼ同様の考え方が当てはまります。簡潔にいえば、人事評価とは従業員の能力や成果を公平に評価する仕組みです。
人事評価システムは、こうした評価業務をシステム上で管理・運用するためのツールです。主な機能は以下の通りです。
【主な機能】
- 人事情報管理機能
- 目標設定機能
- 評価データ分析機能
- 評価シート機能
これらの機能により、人事評価の効率化と適正化が可能になります。
人事評価システムを導入するメリット
人事評価システムの導入で期待できる主なメリットは以下の通りです。
人事評価や勤怠管理などの業務を効率化できる
人事評価システムの導入により、関連する業務を効率化できます。これまで手作業で行っていた業務の多くを自動化できるためです。たとえば、評価シート機能を利用すると、システム上で評価シートを配布・回収して、集計を自動で行えます。また、勤怠管理システムをはじめとする他のシステムと連携して、業務全体を効率化することも可能です。
評価の透明性が向上し、従業員の満足度が高まる
人事評価に対する従業員の満足度も高められる傾向があります。導入により、評価基準が明確になるうえ、データに基づく評価を行えるようになるためです。また、製品の中には、評価者による偏りを把握して、公平性の向上を支援するものもあります。
不明瞭な評価基準ならびに主観的な評価は、従業員の満足度を低下させます。ケースによっては、離職の原因になるでしょう。透明性の高い評価基準と客観的な評価により、従業員の満足度を高められる点は、人事評価システムを導入する大きなメリットと考えられます。
速やかに評価をし、的確にフィードバックできる
ほとんどの人事評価システムは、従業員の能力に合わせた目標を設定し、進捗を確認しながらフィードバックを行える目標管理機能を搭載しています。同機能を活用すると、目標に対する成果を評価して適切なフィードバックが行えます。システム上で作業を行えるため、評価とフィードバックのスピードを早められる点が魅力です。業務と評価との時間差を短縮できるため、従来の方法よりも改善点を業務に活かしやすくなります。
情報を一元管理して、多様な働き方に対応できる
人事評価システムを導入すると、従業員のスキル、資格、経験、異動などの情報を一元管理できます。これらの情報は、履歴書や社員名簿などに散在していることが一般的です。したがって、何かしらの目的で活用したい場合は、さまざまな書類を確かめなければなりません。情報管理の方法によっては、必要な情報を見つけるまでに時間がかかったり、見つけられなかったりすることがあるでしょう。人事評価システムを導入すると、このようなトラブルを防ぎやすくなります。多様な働き方を支えることにもつながります。
客観的なデータに基づいて、人材を育成・配置できる
一元管理した情報を活用して、適材適所の人員配置を目指せる点も魅力です。客観的なデータをもとに検討を進められるため、企業全体の生産性を高めやすくなります。たとえば、プロジェクトに必要なスキルを有する従業員の中から、過去によく似たプロジェクトに携わった経験がある人材を配置することもできます。一元管理した情報を活用すれば、人材育成にもつながります。具体的には、従業員が設定した目標をもとに、部署横断的に教育を行うなどが考えられます。人材育成、人材配置においてもメリットを期待できます。
評価の公平性・一貫性を担保できる
人事評価システムの導入により、評価の公平性や一貫性も高められます。すべての従業員が、同じ基準(評価シート)で評価されるためです。また、履歴が残るため、評価の偏りも防ぎやすくなります。前述の通り、評価者ごとの偏りを解析して、公平性の向上を支援する製品もあります。誰もが納得しやすい仕組みを構築できる点は、人事評価システムを導入するメリットといえるでしょう。モチベーションの向上や離職率の低下につながる可能性があります。
人事評価システムを導入するデメリット
人事評価システムの導入時に注意したい主なデメリットは以下の通りです。
導入と運用の費用がかかる
人事評価システムの利用には、一定の導入費用と運用費用がかかります。目的を踏まえて、費用対効果を確認してから導入することが重要です。参考に、導入費用と運用費用の目安をタイプ別に紹介します。
| タイプ | 導入費用 | 運用費用 |
| オンプレミス型 | 100万~ | 10万円~ |
| クラウド型 | 0万円(無料)~20万円 | 1万~6万円 |
具体的な金額はケースによって異なります。導入費用だけでなく、運用費用もかかるため、中長期的な視点でコストを評価することが大切です。
システムの設定や運用ルールの整備などに手間がかかる
運用開始には、手間と時間がかかる点にも注意が必要です。以下の点などを検討しなければなりません。
【運用開始までに検討するポイント】
- 自社に適したシステム
- システム化するプロセス
- システムの設定
- 運用のルール
速やかに導入できるクラウド型人事評価システムでも、運用開始まで1カ月以上かかることがあります。導入に一定の手間と時間がかかるため、余裕をもって準備を進めましょう。
従業員への説明や研修が必要になる
人事評価システムを利用する従業員のITスキルはさまざまです。誰でも問題なく利用できるように、対策を講じておく必要があります。取り組みを怠ると、導入した人事評価システムが現場に浸透しにくくなります。検討したい対策の例は以下の通りです。
【検討したい対策】
- 社内説明会や社内研修会を開催する
- 各部署に操作マニュアルを配布する
- 社内に相談窓口を設置する
利用者の立場で、対策を検討することが大切です。
人事評価制度に合わないシステムだと成果が出ない
人事評価制度と人事評価システムには相性があります。たとえば、評価項目や評価プロセスが大幅に異なる製品は相性が悪いといえるでしょう。このような製品を選ぶと、以下のトラブルなどが起こり得ます。
【トラブルの例】
- 業務効率が低下する
- 人事評価制度の見直しが必要になる
期待している成果を出せないばかりか、業務に支障が生じることも考えられます。既存の人事評価制度をもとに、必要な機能を洗い出して、導入する製品を選ぶことが重要です。
人事評価システムを導入する流れ
人事評価システムを導入する基本的な流れは次の通りです。
【導入の流れ】
- 課題を特定して、導入の目的や目標を明確化する
- 現行の評価制度を見直し、システムの要件を整理する
- 複数の人事評価システムを比較・検討する
- 運用ルールを作成し、システムを導入する
- 定期的に目標の達成度を評価し、運用方法を改善する
ここでは、各ステップについて解説します。
課題を特定して、導入の目的や目標を明確化する
最初に、人事評価システムを導入する目的、導入によって達成したい目標を明らかにします。ここでいう目的や目標は、原則として現在の課題と連動しています。たとえば、課題が「評価業務の負担が大きい」であれば、目的は「評価業務の効率化」になるでしょう。目的や目標を明らかにすると、自社に適している製品を選びやすくなります。
現行の評価制度を見直し、システムの要件を整理する
次に、自社の人事評価制度を見直します。相性のよい製品を見極めるためです。人事評価システムにより、採用している評価シートや機能は異なります。自社の環境をもとに選ぶと、ミスマッチを防ぎやすくなります。制度そのものに不備がある場合は、このタイミングで修正が必要です。現行の制度をシステムに反映しても、課題は解決できません。専門家のサポートを要する場合は、ベンダーの担当者に相談するとよいでしょう。
複数の人事評価システムを比較・検討する
ここまでの内容をもとに、複数の人事評価システムをリストアップして比較・検討します。具体的な取り組みは以下の通りです。
【比較・検討の方法】
- 公式サイトで情報を集める
- 資料を取り寄せる
- 無料トライアルを利用する
- ベンダーの担当者に相談する
比較したいポイントは次の通りです。
【比較するポイント】
- 導入費用と運用費用
- 操作性
- セキュリティ対策
- サポート体制
実際に業務で使用する従業員の意見を参考にすることも大切です。
運用ルールを作成し、システムを導入する
比較・検討した結果をもとに、導入する製品を決定します。続いて、導入に向けて運用ルールを作成します。基本的なポイントは以下の通りです。
【運用ルールのポイント】
- 目標
- 評価者
- 被評価者
- 評価の方法
- 評価の基準
- 評価の期間
- フィードバックの内容
ルールを定めて、円滑に運用できる体制を構築することが重要です。
定期的に目標の達成度を評価し、運用方法を改善する
運用開始後は、以下の点などを定期的にチェックして、運用方法を改善していきます。
【チェックポイント】
- 目標達成度
- 運用状況
- フィードバック
これらをもとに現在の課題を発見して、改善を繰り返し、効果を少しずつ高めていきましょう。
人事評価システムの導入はメリットが大きい取り組み
ここでは、人事評価システムを導入するメリットとデメリットを解説しました。主なメリットは関連する業務を効率化できることと従業員の満足度を高められること、主なデメリットは一定の費用がかかることと現場への浸透に時間がかかることです。基本的には、デメリットよりもメリットが大きい取り組みといえるでしょう。コストパフォーマンスに優れる製品をお探しの方は、1IDあたり100円~利用できる「ヒョーカクラウド」を候補に加えてみてはいかがでしょうか。人事評価にかけている時間を、大幅に削減できることがあります。
監修者情報
山本 直司(やまもと ただし)
株式会社シーグリーンHR事業部
評価制度構築チームマネジャー
これまでに100社以上の評価制度構築・見直しを担当し、特に100名以下の中小企業に適したシンプルで効果的な仕組みづくりを強みとしています。
構築にとどまらず運用支援まで一貫して行い、導入企業の9割以上が継続的に活用している実績があります。
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この資料で分かること
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