介護施設の「訪問介護部門」の年間目標例|施設介護との違いや注意点

介護施設では、施設介護のほかに「訪問介護部門」を展開するケースが見受けられます。訪問介護部門も施設介護と同様に、年間目標を設定することが大切です。とはいえ、「訪問介護の年間目標をどのように立てたら良いかわからない」と悩む人も、多いのではないでしょうか?

そこで当記事では、介護施設の「訪問介護部門」に焦点をあて、年間目標の設定方法はもちろんのこと、訪問介護との違いや注意点も解説します。

訪問介護にとどまらず、介護職全体における目標設定例・メリットなどを知りたい場合には、以下の記事も参考にしてください。

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訪問介護で年間目標を設定するメリット/施設介護との違い

訪問介護職は利用者宅で働く特性上、個別で活動することが多く、仕事ぶりを周囲に見てもらう機会も少ないでしょう。また、利用者への思いやり・快適性など、求められる要素も抽象的な傾向にあります。加えて、ルーチンワークも多く見受けられます。

周囲の目がなくルーチンワークも多ければ、日々の仕事をなんとなくこなしがちであり、モチベーションや帰属意識が低下しやすいでしょう。

そこで年間目標を設定すれば、目標達成に向けたプロセスが明確になり、チーム意識や日々のやりがいが生じやすくなります。モチベーションが高まれば、業務への丁寧さが増し、仕事の質がアップします。良質な仕事は利用者の満足度を高め、組織の発展や業績に良い結果をもたらすでしょう。

訪問介護部門の目標設定時に意識するポイント

施設介護は施設内でチームワークを発揮しながら、利用者のサービス向上につとめることが特徴です。一方訪問介護では、利用者の自宅に1人または数名で訪問してサービスを提供することから、上司や同僚に仕事ぶりを見てもらいにくいでしょう。

そのため、訪問介護部門の目標設定時には、以下のポイントを意識する必要があります。

仕事ぶりが見えにくいため「可視化」が重要

訪問介護部門は、施設を離れて利用者宅を訪問する関係上、施設介護よりも仕事ぶりが見えにくいといえます。状況が見えにくいなかで、目標設定をし、ゴールに向かって適切に進めているかをチェックするには、現状の可視化が欠かせません。可視化によって、本人はもちろんのこと、周囲も正しく状況認識ができるでしょう。

共通認識をもてる定量的な内容にする

介護職は利用者の満足度を意識するため、思いやり・丁寧さのような、定性的な内容を求められるケースが多いといえます。定性的な内容は人によって判断が変わりやすいことから、目標設定時には、誰もが共通認識をもてる「定量的な内容」に変換する必要があります。

目標を定量的な内容に落とし込むことによって、先述の「可視化」も実現しやすいでしょう。

チームワークを思い浮かべられる

訪問介護は施設から離れる時間が多い分、チームワークを意識しにくくなります。そのため、施設介護のメンバーよりも、施設への帰属意識が低下しがちです。

帰属意識をもたせるには、目標設定時に、チームワークを思い浮かべられる内容が好ましいといえます。目標達成でチームを意識できれば、施設外で働く時間が多いとしても、チームを意識した動きが期待できます。チームを念頭に置いて行動できれば、帰属意識の維持が期待できるでしょう。

訪問介護の年間目標設定例

ここでは、訪問介護の年間目標設定について、実際に例を挙げて説明します。経験年数ごとの目標設定例は、以下の通りです。

ケース1:新人(入社から2年目まで)

入社から2年目までの新人は、経験自体が浅いため、第一に業務を覚えます。また業務を覚えたうえで、3年目以降のステップにつなげるための「動き方」や「必要資格」などの習得が必要です。上記を踏まえたうえで、新人の訪問介護スタッフには、以下のような年間目標を設定すると良いでしょう。

【年間目標】

介護に必要な基本的知識や技術を習得し、人数が限られた訪問介護の現場で活かす。

【目標と現状のギャップ】

経験が浅いことから、業務に必要な知識・技術が不足している。施設介護と訪問介護の違いを理解する努力も必要である。

【目標達成に必要な要素】

  • 介護自体でマストとされる、基本的な知識・技術
  • 訪問介護スタッフの業務内容への理解

~取得を推奨する資格~

  • 介護職員初任者研修

ケース2:中堅(入社3年目から7年目まで)

入社3年目から7年目ほどの中堅層は、ひととおりの業務は覚えており、キャリアを追求しステップアップする段階だといえます。また部下へのマネジメント力も、必要とされる時期です。そのため、次なるキャリアを目指し、後輩への指導力もつくような年間目標を設定すると良いでしょう。

【年間目標】

訪問介護で要する専門性の高い知識や技術に加え、後輩へのマネジメント能力も習得する。

【目標と現状のギャップ】

介護スタッフに必要とされる一般的な能力は身についているものの、応用や自身での決断が難しい。今まではマネジメントされる側だったので、逆の視点に立つ努力が必要である。

【目標達成に必要な要素】

  • 基礎よりも踏み込んだ知識・技術
  • マネジメント経験

~取得を推奨する資格~

  • 介護福祉士実務者研修
  • 介護福祉士

ケース3:ベテラン(入社8年目以上)

ベテランは自分の業務はもちろんのこと、組織全体を踏まえた考え方や動きが求められます。後輩の指導に加え、後輩を指導できるスタッフの育成・利用者への説明・多職種との連携など、多岐にわたる力が身につく目標設定が必要です。

【年間目標】

訪問介護の仕事をトータル的に俯瞰したうえで、全体を意識した行動が行なえると同時に、次世代のスタッフを育成する。

【目標と現状のギャップ】

高い技術やスキルを保持するものの、日々の業務を実践することで精一杯な状況である。そのため、次世代スタッフを育成し、広い視野をもちチームの業務を回せるような努力が必要である。

【目標達成に必要な要素】

  • 現状を俯瞰的に見渡せる能力
  • 次世代スタッフの輩出

~取得を推奨する資格~

  • 重度訪問介護従事者
  • 認定介護福祉士

訪問介護の年間目標設定における失敗ポイント

年間目標の設定はメリットがある一方で、目標設定を誤ると、かえってマイナスな結果を招く可能性があります。訪問介護の年間目標設定における「失敗ポイント」について、代表的な内容は以下の通りです。

高すぎる目標・低すぎる目標

現実からかけ離れた高すぎる目標や、ハードルが低すぎる目標は、せっかく目標を立てても失敗しがちです。

高すぎる目標は現実感が乏しく、「どうせ努力しても無理」などと考え、戦意喪失につながる可能性があります。目標達成に向けて努力しても、なかなかゴールが見えず、精神的に苦しくなるでしょう。自信を消失させ、モチベーション低下にもつながります。

一方で低すぎる目標は、努力をしなくても達成できるため、成長意欲に蓋をしてしまいます。

現状から程遠くないものの、努力しなければ達成できないような目標設定が望ましいでしょう。

組織が一方的に目標設定をする

目標は、自分が決めた内容だからこそ、達成への思いが芽生えるものです。誰かに決められた目標だと、やらされた感があるため、意欲的な取り組みが難しいケースも見受けられます。

また組織が一方的に目標設定をした場合には、本人の希望や意志と一致しにくく、納得感の低い内容になりがちです。本人の意図しない目標達成を促しても、モチベーションが低下しやすく、利用者へのサービス低下が危惧されます。

目標設定をする際には、本人とコミュニケーションを取りつつ、一緒に考えることが大切です。

訪問介護の年間目標設定の実施方法

訪問介護の年間目標を設定する際には、以下の順番で実施すると良いでしょう。

1、最終目標を決める

年間目標を設定する際には、まず最終目標を決める必要があります。なぜなら、最終的な目標というゴールがなければ、そこに向かうための道(具体的な行動・時期・手段など)がわからないからです。カーナビの設定と同様に、まずは目的地を入力することで、目的地に向かう道が見えてきます。

最終目標を決める手段は、上司と本人との1on1が望ましいでしょう。

現状と最終目標とのギャップを把握する

最終目標が決定したあとは、そこに向かうための作戦を練る必要があります。作戦を練る際には、現状と最終目標との間に「どれだけのギャップがあるか?」を把握することが大切です。ギャップの大きさや種類によって、ベストな方法が見えてくるでしょう。

ギャップを把握する手段は、1on1はもちろんのこと、評価制度による「評価結果」の参照もオススメです。

目標達成に必要な行動・資格を知る

現状と最終目標とのギャップを把握したら、目標達成に必要な行動・資格を整理します。行動を決める際には、上司が一方的に指示するのではなく、本人の希望や意志を尊重しながら進めましょう。コミュニケーションを取りながら行動や資格を決めることで、納得度の高い目標を設定できます。

訪問介護部門の適切な目標設定を目指すなら

訪問介護スタッフは施設外で働くため、周囲の目が届きにくく、モチベーションが低くなりがちです。適切な年間目標を設定すれば、日々の業務にメリハリが生じ、モチベーションアップにつながります。

適切な目標設定や、着実な達成を目指すなら、人事評価制度の導入が効果的です。なぜなら評価制度は、「適切な目標設定」および「目標達成に必要な項目」を用意するものだからです。

人事評価システム「評価ポイント」は、ポイント制を採択しており、スタッフ同士でお互いの頑張りをポイント評価できます。訪問介護スタッフ同士をはじめ、多職種からの評価も反映可能であり、本人のやる気につながるでしょう。他社の行動を意識するため、コミュニケーション活性化も期待できます。訪問介護部門の適切な目標設定を目指すなら、人事評価システム「評価ポイント」を検討してみては如何でしょうか。

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