介護職員処遇改善加算とは?取得手順や計算方法・要件などを解説

介護職員処遇改善加算とは、利用者に一定基準以上のサービスを提供すべく、介護スタッフの処遇を安定させるための制度です。介護従事者であれば、正確な情報を知っておきたい内容だといえます。しかし、現段階において制度内容を正しく理解している人は、少ないのではないでしょうか?

そこで当記事では、介護職員処遇改善加算の概要をはじめ、取得手順や計算方法なども解説します。介護職に従事する担当者様は、ぜひ参考にしてください。

介護職員処遇改善加算とは?

介護職員処遇改善加算とは、介護業務に従事する者が安定的に働けるよう、国から事業所にお金を支給する制度のことです。お金を支給された事業者は、職場環境の整備・改善や、スタッフの賃金への充当などを実施します。

少子高齢化がさけばれるなか、介護関係の施設や機関においても、人材を適切に確保することは必須だといえます。そのためには、職場環境を良い状態に保ち、スタッフの賃金を改善するなどの努力が必要です。介護職員処遇改善加算を職場の環境改善に活用すれば、人材の定着によって、高品質なサービスを維持することにつながるでしょう。

介護職員処遇改善加算と特定処遇改善加算の違い

介護職員処遇改善加算と似た言葉に、特定処遇改善加算があります。その違いは、対象者の範囲です。

~介護職における対象者~

  • 介護職員処遇改善加算…介護職員全般
  • 特定処遇改善加算…勤続10年以上で、介護職員のなかでもとくに経験・技能がある人

介護職員処遇改善加算は、介護スタッフ全体の賃金底上げなどを目的とし、制定された制度です。一方で特定処遇改善加算は、介護スタッフのなかでもリーダー職に対する賃金改善などを目的にしています。また特定処遇改善加算の要件である「勤続10年以上」は、ほかの事業所での勤続年数も通算して良いとされます。

介護職員処遇改善加算は3種類!それぞれの対象は?

介護職員処遇改善加算の対象は、介護関連の職員全般だとわかりました。また介護職員処遇改善加算は、以下の3種類にわけられます。

  • 処遇改善加算Ⅰ
  • 処遇改善加算Ⅱ
  • 処遇改善加算Ⅲ

(※加算Ⅳと加算Ⅴは令和3年3月に廃止されたので、ここでの説明は割愛します。)

3つの種類における概要と、それぞれの対象者は以下の通りです。

処遇改善加算Ⅰの要件と対象者

処遇改善加算Ⅰの所得要件は、以下におけるキャリアパス要件の1・2・3すべてを満たし、職場環境等要件(※)も満たすことです。

【キャリアパス要件】
1、職務内容や職責・職位に応じ、適切な任用要件と賃金体系を整備
2、能力向上にむけた計画策定とともに、研修の機会を設ける
3、経験や資格に応じた昇給制度、または一定基準による昇給制度を構築

処遇改善加算における職場環境要件とは、以下の区分について、1つ以上に取り組んでいることです。(※特定処遇改善加算の場合には、各区分ごとに「1つ以上」の取り込みを行なう必要があります。)

画像の引用元:厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000953647.pdf

厚生労働省によると、処遇改善加算Ⅰでは、月額3万7千円(1人あたり)ほどを想定しています。

処遇改善加算Ⅱの要件と対象者

処遇改善加算Ⅱは、以下のキャリアパス要件における1・2を満たし、職場環境等要件も満たすことです。(職場環境等要件の条件は、前述の「処遇改善加算Ⅰの要件と対象者」をご参照ください。)

【キャリアパス要件】
1、職務内容や職責・職位に応じ、適切な任用要件と賃金体系を整備
2、能力向上にむけた計画策定とともに、研修の機会を設ける
3、経験や資格に応じた昇給制度、または一定基準による昇給制度を構築

厚生労働省によると、処遇改善加算Ⅱでは、月額2万7千円(1人あたり)ほどを想定しています。

処遇改善加算Ⅲの要件と対象者

処遇改善加算Ⅲは、以下のキャリアパス要件における1または2を満たし、職場環境等要件も満たすことです。(職場環境等要件の条件は、先述の「処遇改善加算Ⅰの要件と対象者」をご参照ください。)

【キャリアパス要件】
1、職務内容や職責・職位に応じ、適切な任用要件と賃金体系を整備
2、能力向上にむけた計画策定とともに、研修の機会を設ける
3、経験や資格に応じた昇給制度、または一定基準による昇給制度を構築

厚生労働省によると、処遇改善加算Ⅲでは、月額1万5千円(1人あたり)ほどを想定しています。

加算対象外の事業所がある

介護職員処遇改善加算は、介護関係の事業所すべてが、加算の対象になるわけではありません。加算対象者は、介護を行なう人が実際に配置されている事業所であるため、以下のような事業所は加算対象外です。

  • 訪問介護
  • 訪問リハビリテーション
  • 介護予防支援
  • 福祉用具のレンタル
  • 居宅介護の支援

また、直接的に介護を行なうスタッフが配置されている事業所であっても、そこで働く看護師や栄養士は対象外です。ただし雇用形態は問わないため、パートやアルバイトの介護スタッフは対象になります。

介護職員処遇改善加算の計算_考え方を紹介

つづいて、介護職員処遇改善加算における計算方法や考え方を紹介します。実例を挙げて紹介するので、ぜひ参考にしてください。

まずは、介護職員処遇改善加算の計算方法について、基本的な考え方を紹介します。計算の流れは以下の通りです。

  • 1、総単位数を算出する
  • 2、加算率を乗算する
  • 3、金額として変換する

計算方法のイメージをつけるため、以下の条件を例として、実際に計算してみます。

サービスの種類:通常規模型の通所介護
サービスの提供時間:8~9時間要介護度:Ⅱ(※この場合、単位は787)詳しい単位はこちらhttps://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2021/0331152949837/20210331_003.pdf
地域区分:2級地(※この場合、10.72円)詳しい地域区分はこちらhttps://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000566688.pdf
取得加算:サービス提供体制強化加算Ⅰ(通所介護なので22単位/1回)
介護職員処遇改善加算の区分:Ⅰ(5.9%)詳しい加算率はこちらhttps://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001065272.pdf
1か月あたりの利用回数:5回

上記の例で計算すると、以下の通りです。

1、総単位数を算出する

まずは、介護報酬の計算に使用する「総単位数」を算出します。

計算式は以下の通りです。

~総単位数の計算式~

総単位数は、「(基本サービス単位数)+(加算・減算の合計)」です。

【基本サービス単位数】

787単位×5回=3,935

【加算・減算の合計】

22(※取得加算)×5回=110

3,935+110=4,045(=総単位数)

2、加算率を乗算する

前述の総単位数をもとに、加算率を乗算します。

~加算率を乗算する計算式~

4,045×5.9%(加算率)=238.655

※小数点以下については、四捨五入するので、処遇改善加算で使用する総単位数は239です。

3、金額として変換する

最後に、総単位数を金額に変更します。

~総単位数を金額化する計算式~

239単位×10.72(地域区分)=2,562.08

※小数点以下は四捨五入ではなく「切り捨てる」ため、2,562円になります。

介護職員処遇改善加算にむけて職場環境の改善を

介護職員処遇改善加算は、利用者への安定的なサービスの提供を踏まえた制度です。取得するには、適切な賃金体系や研修体制を設けるほかに、職場環境の整備も必要になります。そのためには、人事評価制度の用意または見直しが有効です。人事評価制度は、組織の目標を掲げたうえで、必要な項目を設けて達成を目指す仕組みであるため、制度を実行するだけで職環境や賃金体系の整備につながるからです。

適切な人事評価制度を用意すれば、介護職員処遇改善加算の取得にむけて前進でき、快適な環境環境も準備できるでしょう。人事評価制度を検討する場合には、介護業界からも支持をあつめる、人事評価システム「ヒョーカクラウド」がオススメです。制度の構築からサポートを依頼したい場合には、「人事評価構築パッケージ」も有用です。

職場環境を整え、介護職員処遇改善加算の対象を目指す場合には、ヒョーカクラウドをぜひご検討ください。

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