世の中にさまざまなトレンドが存在するように、人事評価制度にもトレンドがあります。
人事評価制度のトレンドは、その時の「経済情勢」や「働き方のブーム」にそってつくられることが特徴です。そのため、トレンドをうまく取り入れると、従業員の働きやすさや企業の発展につながります。
平成の時代には、人事評価と給与査定をセットにして設計をしている企業が多くありました。しかし、令和時代は「VUCA(ブーカ)時代」と呼ばれ、経済の流れは加速しています。
※変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)
以前のように人事評価と給与査定に強固な紐づけを行ってしまうと、業績が伴わないのに人件費が高騰してしまう恐れがあり、必要な原資が不足すれば、経営を揺るがしかねません。
そこで、評価に対する報酬を給与査定のみで固めない、経営計画と人事評価制度の構築が、現代の人事評価制度のトレンドとなっているようです。
当記事では、令和における人事評価制度のトレンドを紹介し、それぞれのメリットやデメリットも解説します。
評価制度のトレンドを知り、自社にあった制度を取り入れたい企業様は、ぜひ参考にしてください。
目次
令和の評価制度_5つの傾向とは?
令和の人事評価制度には、5つの傾向があります。
詳細は、以下の通りです。
1、成果主義から役割主義にシフトしている
1つ目は、成果主義から役割主義にシフトしていることです。
役割主義とは、従業員が担当する職務や仕事に応じて、報酬や等級を決める仕組みを指します。役割主義は、ジョブ型とも呼ばれます。
1990年代には、人事評価制度の主流は「成果主義」に変化しました。成果主義とは、仕事の成績やプロセスにもとづき、報酬や等級に反映させる仕組みです。
しかし、成果主義には以下の問題があります。
・チームワークが弱くなる
・短期的な結果にフォーカスしがち
・高く評価してくれる場所を求め、離職率が高まる
そのため、従業員の役割に着目するようになり、評価制度も「役割」を意識した内容が多くなりました。
2、行動を重視する
2つ目は、行動を重視することです。
前述の通り、昨今では役割主義がトレンドです。
役割主義では、従業員の役割にもとづく行動がフォーカスされるため、行動を重視します。
従来では勤続年数、スキル、結果を出したか?といった点が重視されていました。一方昨今では「どのような行動をしたか?」が重視されます。
そのため、人事評価制度も「従業員の行動」を評価する内容が増えています。
3、評価期間が短くなり、リアルタイム化している
3つ目は、評価期間が短くなり、リアルタイム化していることです。
従来は、ボーナスの時期など(1年や半年ごと)に評価する傾向にありました。
なぜなら、成果主義では「成果をはかる期間」が必要だからです。
しかし、昨今では役割主義で「行動を重視」するため、1年や半年ごとの評価では正しく評価できません。
そのため、人事評価制度の評価期間が短くなり、今ではリアルタイム化しています。
4、ランクで判断しない
4つ目は、ランクで判断しないことです。
従来では、従業員を「A、B、C」「一等級、二等級」などとランクで管理していました。
しかし昨今では、従業員にランクを付与しても、意味をなしません。
なぜなら、急速な「グローバル化」や「環境の変化」によって常に状況が変化するからです。
また、少子高齢化による労働人口の減少も、ランク廃止を加速させています。
労働人口の減少で「働く人の母数」が減っているため、ランクにたよらず「1人ひとりを丁寧に育てる」動きが求められるからです。
5、評価の「見える化」でオープン主義に
5つ目は、評価の「見える化」でオープン主義になっていることです。
従来では、多くの企業が評価基準や結果を非公開にしていました。
しかし昨今では、評価制度を従業員に開示した方が「納得感を得られる」とわかっています。そのため、評価の見える化を実施する企業が増えました。
また「見える化」にともない、関係者で一元管理できるよう、専用システムを導入する動きも増えています。
人事評価のトレンドを導入するメリット・デメリット
人事評価のトレンドを導入するメリット・デメリットとは、どういったものでしょうか?
そもそも、人事評価制度というのは、単に給与査定の見える化を行うものではありません。
給与査定の見える化は、中長期の経営計画を軸に、採用計画や人事計画を構築することで、会社のビジョンを実行することを目的として行われます。
さらに、それを評価されることで、従業員のモチベーションをあげるのが本来の人事評価制度の意義といえます。
そのため、社員が一丸となって、会社のビジョン実現を目指した人事制度であれば、ゴールが明確となるため、各自が納得して仕事に取り組むことができます。
また、事務や経理といったバックオフィスの業務も、ヤル気を出しやすいのも特徴のひとつです。
バックオフィス業務は、営業などの数値化しやすい業務とは違い、成果が数値に現れにくい業務ですが、明確な目標を設定し、取り組みを評価することでモチベーションを高める効果が期待できます。
またトレンドを導入した人事評価の実施によって、時代に即した判断ができるため、従業員の納得度を高められますし、競合他社に負けない企業体制づくりにもつながるというメリットがあるでしょう。
一方デメリットは、トレンドを手当たり次第に取り入れると、自社にあわない可能性が出てくるため、自社にあったトレンドを厳選する必要があることです。
また、評価を行うマネジメント層がビジョンを正しく理解していなかったり、評価制度の目的を理解していなかったりすると、うまくいかない原因となりますし、人事評価を直属の上司のみで行うと、評価者の判断基準によって評価に差ができてしまうケースも出てくることでしょう。
そのため、適切な研修・教育を行うだけではなく、定期的にフォローアップ研修を行うことも重要なポイントといえます。透明性を高めるため、評価制度を社員に公表し、属人的でなく、より正確かつ公平な評価システムを構築できるように心がけましょう。
さらに、人事制度が変わると、給与が下がってしまい反発を招くケースがあります。従来の人事評価制度に慣れていたベテラン勢からは反感を買うこともあるでしょう。
給与査定のルールを明確にし事前に提示すると共に、移行期間を設けることで解決の糸口を探しましょう。
令和の人事評価制度_7つのトレンド
令和時代の人事評価制度には、7つのトレンドがあります。
詳細は以下の通りです。
リアルタイムフィードバック
リアルタイムフィードバックとは、読んで字のごとく、リアルタイム(=即時)にフィードバックをおこなう手法です。
上司が、部下の成果や働きぶりをリアルタイムで評価します。
こまめにフィードバックできるため、軌道修正をしやすいことが特徴です。また、頻繁にコミュニケーションを取れるため、組織の活性化が期待できます。
ただしフィードバックの頻度が多すぎると、上司・部下双方に負担がかかるため、適切な頻度の見極めが必要です。
バリュー評価
バリュー評価とは、企業が設定したバリューを実践・達成できているかを評価する手法です。
企業が設定するバリューとは、「自社の社員としての行動基準」を指します。
バリュー評価を実施すると、企業の方針や価値観にそって、従業員がどれだけ忠実に行動できたかがわかります。
バリュー評価を通じ、企業方針を浸透させることも可能です。
ただし数値で評価しにくいため、主観の入らない仕組みづくりが必要になります。
OKR
OKRとは、「会社の目標」と「個人の目標」をリンクさせ、達成度を評価する手法です。
チームと個人の目標をリンクさせることもあります。
OKRでは双方の目標をリンクさせるため、認識がズレにくい点が特徴です。
ただし、複数の部署を兼任する従業員は、目指す目標が多くなる可能性もあります。目標が多くなると従業員の負担が増えるため、企業サイドでバランスを考えることが大切です。
360度評価
360度評価とは、1人の被評価者に対し、複数の関係者が多面的に評価をおこなう手法です。
上司・同僚はもとより、自分自身やクライアントの評価が加味されるケースもあります。
多くの人が評価するため、客観的な評価が実現します。また、上司が見えていない部分を評価できる点も特徴です。
ただし明確な評価基準をつくらないと、曖昧な評価結果になりかねません。
また高評価を求めるあまり、他人に甘い評価をつける人もいます。
そのため、被評価者と密接に仕事をする人には、評価項目を限定させるといった対策が必要です。
ノーレイティング
ノーレイティングとは、従業員にABCなどのランクをつけない評価手法です。
ランクをつけないかわりに、リアルタイムで目標設定を実施し、都度評価をおこないます。
即時に評価するため、コミュニケーションの活性化につながります。
また、急な環境の変化にも対応しうる点が特徴です。
ただし、評価する頻度が多いと評価者の負担が増えるため、実施するスパンに配慮が必要です。
コンピテンシー評価
コンピテンシー評価とは、企業が理想とする優秀な社員像にもとづき、その人物の行動特性と比較して評価する手法です。
理想とする社員像は、実在する社員の場合もあります。
評価基準が明確なので評価しやすく、人材の育成にも役立ちます。
ただし、社員像の抽出に時間を要することが難点です。
また「取り巻く環境」や「会社の立ち位置」が変化すると、理想の社員像も変える必要があります。
ピアボーナス
ピアボーナスとは、ピア(=仲間)同士で評価しあい、ボーナス(=報酬)を贈りあう制度です。
一般的にボーナスはポイントでカウントし、ポイントを商品、サービス、お金などに変えます。
積極的に社員同士を褒めあうため、コミュニケーションの活性化や職場の雰囲気がよくなることにつながります。
ただし、同じ相手には「一定期間を置くと評価できる」など、細かいルールが必要です。
まとめ
人事評価を刷新すれば、今までの人事評価に慣れていた従業員からは、どうしても不満が出てきてしまうことでしょう。また、制度の構築・導入・運用など、多彩な苦悩が伴います。
とはいえ、いまの「不確実性の時代」にそぐわない旧態依然とした人事評価のままでは、会社の経営に影響を及ぼしてしまう可能性もあるため、人事評価の刷新は必要なことといえます。
人事評価にトレンドを取り入れると、時代に即した判断ができるため、従業員の納得度を高められます。大切なのは、すべてのトレンドを取り入れるのではなく、自社にあった内容を厳選することです。
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【令和版】評価制度の作り方

この資料で分かること
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