1on1が多くの企業で導入されるとともに、1on1へのネガティブな意見がいくらか聞かれるようになりました。
「1on1にデメリットしか感じない。」
「1on1はやる意味がないのでは?」
「1on1で話すことがない。」
ヤフーのように1on1で業務改善させた企業があるかと思えば、1on1を導入しても変化がなかったりむしろマイナスに転じてしまった企業も少なからずあります。同じシステムであるはずなのに会社によって明暗がわかれてしまうのはなぜなのでしょうか。
理由を探るべく1on1のデメリットとメリット、1on1の意義、1on1を改善するための方法を解説します。1on1の効果を得られず悩んでいるあなたこそ呼んでみてください。
目次
1on1の概要
1on1とは、1on1ミーティングを略した言葉で2人によって行われる会議をさします。上司と部下の2人で行われることが多く、部下の進捗状況を確認したり成長のアドバイスをしたりします。
人事評価の面談とは異なり、毎月や隔週、毎週のペースで実施されるのが通例です。代わりに会議の時間は30分〜15分程度と短く設定されます。たとえ短時間でも近いスパンで実施したほうが効果があるとされます。
1on1のデメリット
業務時間の増加
会議の時間を新たに設けるので社員に負担がかかります。部下は期間内に1度の1on1で終わりますが、上司は部下が増えれば増えるほど多くの時間を必要とします。毎回30分必要な場合は5人の部下で2時間30分、10人の部下で5時間かかる計算です。
また、1on1は会議の時間だけでなく準備にも時間がかかります。1on1に慣れれば業務を遂行しながら1on1で話したい内容や論点を考えられるようになりますが、1on1の導入初期は大きく時間を費やすことが予想されます。1on1が部下の成長スピードを速められるとはいえ、目の前の業務との兼ね合いを考える必要があります。
改善まで時間を要す
1on1は上司と部下の信頼関係があってはじめて効果を持ちえます。はじめからお互いを信頼できていれば問題ありませんが、信頼関係を1on1で築こうと考えている企業が大半でしょう。つまり、1on1を導入する多くの企業において、1on1のメリットを享受するのには時間がかかると言えます。
1on1が結果に反映されるまでの間にも事業は進んでいきます。短期的な目標を追い求めるがあまり1on1で部下を問い詰めているようでは信頼関係を築けません。成果になるまでじれったい期間があるとは思いますが、将来の部下のために着実に回数を積み重ねましょう。
間違った方法による逆効果
1on1はただ実施すればいいわけではありません。正しい方法やテクニックを押さえられていない状況ではマイナスの影響をもたらすことすらあります。高圧的な態度で部下と接したり時間がないからといって実施を避けたりすると、信頼関係を失いかねません。
1on1は実施するだけでも相応の工数がかかるため、時間に見合った成果を出さないと余計な業務を増やして終わってしまいます。1on1を実施するたびにどのようにすれば部下を成長させられるか考えましょう。
1on1のメリット
PDCAサイクルの高速化
1on1は毎月以上の頻度で実施されるため、半年に1回の人事評価面談より行動修正のスピードを向上できます。市場の変化や情報の流動化が見られる現代において、短いスパンでの業務改善は必要不可欠と言えるでしょう。
ただしPDCAサイクルを高速で回すには適切な目標設定と振り返りが欠かせません。時間がないからといって見当違いな目標を立てたり表面的な振り返りをしていては、せっかくの1on1も意味をなしません。質の高い反省をスピーディーに行いましょう。
部下の状況把握
定期的に実施されるため部下の機微に気づきやすくなります。様子の違いを確認できれば声をかけるなど対策を講じられます。また注意深く観察しようと意識を向けられるだけでも変化があるでしょう。
部下の悩みを解決できないままでいると離職の原因になりかねません。反対に問題点を解決できれば退職の理由を取り除けます。部下が会社に良い印象を持ってくれればリファラル採用もあり得るでしょう。1on1は部下の成長ひいては採用にまで影響を与えます。
信頼関係の構築
1on1を実施すれば会議の時間は必然的に2人で話すため、お互いのことを知るきっかけになります。飲み会が好きでない上司や部下も1on1なら距離を縮められます。
信頼によって生じる効果は計り知れません。本当の気持ちを話してくれるようになったり部下から改善提案をしてもらえたりするでしょう。
1on1ミーティングの導入について相談する
詳細はこちら1on1は意味ない?
1on1は意味がないと見なされることもありますが、適切な手順や方法を踏まえていれば効果を実感できるはずです。ではなぜ「1on1は結果を得られない」という意見が散見されるのでしょうか。おそらく1on1の適切な方法を踏まえていないからでしょう。
1on1は失敗すれば逆効果
1on1は正しい方法で実施できれば大きな効果をもたらしてくれる反面、失敗すれば逆効果をもたらしかねない手法です。時間をうまく作れず開催頻度が少なくなったり短期的な利益を追求するあまり上司がやり方を押し付けてしまったりと、1on1の落とし穴はそこかしこにあります。
長期間、目的を見失うことなく継続してはじめてプラスになるのが1on1の難しいところです。しかしその分成功すれば、社員一人ひとりのスキルはもちろん組織の団結力も向上できます。
1on1の正しいやり方を押さえる
「1on1を導入したものの成果を出せない」と悩んでいるあなたは少しの時間でよいので今のやり方を見直してみましょう。または部下から自分に感じていることを聞き出すのもよいでしょう。
やり方が自分や部下に合っていないことが要因かもしれません。他の部署や会社で成功していても自分の場合は状況が異なるので方法をそのまま流用できるとは限りません。他の1on1と比較しながら再度検討してみましょう。
1on1で解決すべき問題
では1on1を成功させるにはどのような方法があるのでしょうか。考えられる方法の1つに、よくある問題を解消してみるものがあります。以下では「時間が取れない」「話すことがないと言われる」の2つに焦点を合わせて解決を試みます。
組織人事コンサルタントの小倉広によれば「時間が取れず実施できない」「話のネタが尽きてしまう」を問題としてあげる方が多いとのことです。
時間が取れない
小倉によれば1on1の時間を確保できない原因は、優先順位の低さにあると言います。1on1の優先度をあげれば優先度の低い業務が相対的に行われなくなり、1on1は無事に遂行されるという論理です。
時間がないのではなく、「1on1よりも優先順位が高い業務がある」もしくは「1on1の優先順位が低い」というのが正しい表現となるでしょう。ここまで明らかになれば答えは簡単です。「1on1の優先順位を高くする」、これが対策となるでしょう。
「時間取れない」「話がネタ切れ」よくある1on1の失敗と対処
しかし、優先順位を上げようとしても会社の状況によってはなかなか上げられないケースも考えられます。優先順位を上げればよいという根本療法は小倉の論にゆずるとして、以降では少しテクニカルな方法を考えてみましょう。
対策 : 15分だけ確保・1on1以外の時間も活用
1on1の時間を短くすれば少ない時間でも1on1を実施できます。1on1に費やす時間を減らす場合「開催頻度を減らす」「1回あたりの時間を減らす」のいずれかを選択する必要があります。短いスパンで実施することが重要な1on1において「開催頻度を減らす」のは良い選択だと言えません。
そのため少ない時間で1on1を実施したい場合は「1回あたりの時間を減らす」方針で考えるべきでしょう。1時間で想定していたなら30分で、30分で検討していたなら15分で終わらせる方法を考えましょう。
また、必ずしも1on1の場だけで部下とコミュニケーションを取らなくてもよいというのもポイントです。朝出勤してあいさつをしたと同時に「仕事の調子どう?」と聞いたり、ランチをとっている横で「なにか悩んでいることはある?」と声をかけてみたりしてもかまいません。完璧な1on1ミーティングを計画して実施できないより、多少つたなくても回数を重ねられる1on1ないしコミュニケーションを心がけると1on1が改善に向かうでしょう。
「話すことがない」と言われる
時間がないことについて小倉の論と同じロジックで考えれば「話すことがない」のではなく、「話すべき内容に気づいていない」「上司に話したくない」だと考えるのが妥当でしょう。本当は話すことがないのではなくもろもろの理由により話せないだけだと言い換えられます。
小倉は「話のネタが尽きてしまう」原因と解決策を5つ提示しています。いずれも一定程度の妥当性があるため、話すことがないと言われる上司の方は一度確認しておくと良いでしょう。
話すことがないと言われたときの対策自体は小倉の述べている原因と解決策を採用すればよいとし、どのようにして迅速に解決させるかを検討します。
対策 : 1on1以外でも1on1を意識
1on1で浮かび上がった問題は1on1だけにとどまらないパターンが多くあります。たとえば1on1で進捗確認しか実施できていないとすると、他の会議でも状況の共有しか行っていない可能性があります。部下が上司に1on1で悩みを相談してくれないとすれば他の業務中でも悩んでいることを相談してくれていないと推測できます。1on1で見られる問題は1on1に限定された問題ではないと言えるでしょう。
逆手に取れば1on1以外で問題を解決できれば1on1においてもポジティブな影響を期待できます。通例の会議が活発にイノベーティブになれば、1on1の場でも議論が白熱するでしょう。デスクで悩みを相談してくれる状態であれば2人しかいない1on1ではさらに深い話ができるでしょう。1on1で垣間見える問題は氷山の一角に過ぎないと考えられると同時に、他の場面で解決できれば1on1の問題も良い方向に向かわせられます。
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詳細はこちら1on1で人事評価の不満を解決
従業員は人事評価に不満
アデコ、NTTコム リサーチ、HRテクノロジー総研、リクルートマネジメントソリューションズ、あしたのチームの各団体は、調査対象が人事評価をどのように感じているか調査しまとめています。調査した結果、多くの従業員は人事評価に満足していないことがわかっています。
人事評価の満足度
各団体の調査によれば、人事評価に対して不満足だと回答した従業員が多くの割合を占めています。リクルートマネジメントソリューションズの場合のみ満足が不満足を上回っていますが、その他の調査では不満足が多くの割合を占めており、全体の傾向として不満足な人が多いと言えるでしょう。
調査団体 | 満足 | 不満足 |
---|---|---|
アデコ | 37.7% | 62.3% |
NTTコム リサーチ | 23.0% | 33.7% |
HRテクノロジー総研 | 19.0% | 41.3% |
リクルートマネジメントソリューションズ | 52.2% | 47.8% |
あしたのチーム | 28.5% | 71.5% |
※満足と不満足を合計しても100%にならないのは、便宜上満足と不満足以外の回答を上記表から除外しているためです。調査対象や調査期間の詳細はスペースの都合上割愛します。お手数ですが各サイトにてご確認をお願いします。
- アデコ…「人事評価制度」に関する意識調査「Q1. あなたはお勤め先の人事評価制度に満足していますか。」の回答。満足は「満足」「どちらかというと満足」、不満足は「どちらかというと不満」「不満」の合計。
- NTTコム リサーチ…「人事評価に関する意識」についてのアンケート調査「人事評価満足度(単一回答)」の回答。満足は「満足計」、不満は「不満計」の値。
- HRテクノロジー総研…評価に対する満足度や不満の原因について調査「人事評価について満足しているか」の回答。満足は「満足している」、不満足は「満足していない」の値。
- リクルートマネジメントソリューションズ…人事評価制度に対する意識調査「人事評価への満足度」の回答。満足は「とても満足している」「満足している」「どちらかといえば満足している」、不満足は「どちらかといえば満足していない」「満足していない」「まったく満足していない」の合計。
- あしたのチーム…中小企業の人事に関する調査〜 従業員編「あなたの会社では人事評価制度の導入をしていますか。(文脈より質問の誤植だと思われます)」の回答。満足は「満足している」「やや満足している」、不満足は「あまり満足していない」「満足していない」の合計。
不満足の原因
各団体は人事評価への不満足や人事評価制度への不満足が何に由来するのかも公開しています。「評価の基準がわからない」「評価の理由が不透明である」といった回答が多く見られました。
調査団体 | 質問内容 | 1位の回答 |
---|---|---|
アデコ | 評価が適切にできていないとお答えになった理由を教えてください。 | 数値化しにくい業務への評価がしにくい |
NTTコム リサーチ | 人事評価の不満理由 | 評価基準が不明確 |
NTTコム リサーチ | 人事評価の仕組みの不満理由 | 評価基準が明確に示されていない |
HRテクノロジー総研 | 人事評価結果について不満な点 | 評価結果に納得感がない |
リクルートマネジメントソリューションズ | 人事評価への満足/不満足の理由 | 何を頑張ったら評価されるのかがあいまいだから |
あしたのチーム | 具体的な不満の内容 | 評価と報酬との関連性が持てていない為 |
1on1で人事評価の不満足を解消
人事評価に対して不満足を抱える理由は「評価の基準がわからない」「評価の理由が不透明である」の2点が多いことを確認しました。一見解決が難しそうな2点の問題は1on1を利用すれば改善を図れます。
評価の基準がわからない
評価の基準がわからないといった声が上がる原因は、評価の基準が示されていないか示されていても認知されていないかのいずれかであると考えられます。基準が明示されていなければわからないのは当然ですが、基準が公開されていたとしても認知してもらうための活動をしてなくては公表していないのも同然です。
1on1を実施すれば評価の基準がわからないという問題を改善に向かわせられます。評価の目標を決める際はお互いに基準の確認をするため基準がない・知らないという問題は起こりません。短い期間で目標を何度も振り返ることで評価基準も健在的ないし潜在的にインプットされるはずです。
評価の理由が不透明である
評価の理由が不明確であると見なされる原因も、評価基準がわからないことと共通しています。すなわち、評価の理由を示していないか伝わっていないのどちらかです。
1on1をとおして「〇〇だから〇〇を評価している・していない」と明示していれば、評価の理由を不審がられることはありません。もし疑問に思われたとしても信頼関係のある間柄であれば、その場で質問してくれるはずなので上司の知らない場所で問題になるケースは起こりにくくなるでしょう。
1on1は使い方次第で大きな効果に!
1on1は単なる会議とは形式が異なるがために導入に失敗した企業は少なくありません。しかし、適切な方法や手順を踏んでいないために失敗している企業が大半なので、改善させられれば1on1の恩恵を十分に受けられるはずです。1on1を導入したものの成果につながらず悩んでいる方は、これを機にやり方を見直し価値のある1on1を実施しましょう。
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1on1パーフェクトガイド
この資料で分かること
- 1on1の目的と活用方法
- 1on1導入での失敗例
- 1on1で取り扱うべき話題